土壁の土は、粘土に藁を混ぜ、発酵させたものを使います。
触ると、しっとりとした粘り気があります。
匂いは、人によっては「臭い」と感じるかもしれません。
けれど、僕はこの匂いがとても好きです。
水をたっぷり含んだこの土を、竹小舞に塗りつけていきます。
土壁職人さんは、手の感覚で塩梅を見ながら水を加えていきますが、
見ていると、バケツで何杯も、ジャバジャバと水を入れていきます。
正直、最初は入れすぎじゃないかと思うほどです。
「この水分が抜けたらカチコチに固まるわけだけど、
これだけの水分を含むことができるということでもあるんだ。」
職人さんのその言葉が、強く印象に残っています。
この土がこれほどの水を含めるのは、
粘土の構造に理由があります。
粘土は、非常に細かい粒子が層のように重なった構造をしていて、
その隙間に水分を抱え込む性質があります。
さらに、藁などの有機物が加わることで、
内部には無数の小さな空隙が生まれます。
つまりこの土は、
単なる「塗る材料」ではなく、
水分を蓄える器のような構造を持っています。
実際に住んでみると、
この性質ははっきりと現れます。
湿度が高いときには水分を吸い、
乾燥してくるとゆっくりと放出する。
室内の空気が、急激に変化せず、
どこか穏やかに保たれている感覚があります。
土壁は、呼吸しています。
それは比喩ではなく、
水分の出入りによって空気を整えている現象だと思っています。