土壁の空間にいると、
空気がどこか柔らかく感じられることがあります。
うまく言葉にはできませんが、
呼吸がしやすく、
長く居ても疲れにくい感覚です。
土壁は、
単に湿度を調整するだけでなく、
空気そのものにも作用しています。
土の内部には、
目には見えない無数の小さな空隙があります。
この多孔質の構造によって、
空気中の水分だけでなく、
匂いの成分や微細な物質も、
ゆっくりと吸着し、また放出します。
つまり土壁は、
空気をそのまま通すのではなく、
一度受け止めて、整えてから返す
ような働きをしています。
例えば、家の中で焼肉をした後でも、
翌日には匂いが一切残りません。
特別な換気をしたわけでもなく、
窓を開け放したわけでもないのに、
気づくと匂いが消えています。
最初は不思議でしたが、
土壁が空気中の匂いの成分を受け止め、
ゆっくりと整えているのだと思います。
この作用によって、
室内の空気は急激に変化せず、
どこか穏やかで、
角の取れた状態に保たれます。
人は、空気を直接見ることはできません。
けれど身体は、
温度
湿度
匂い
空気の動き
といった要素を通して、
空気の質を感じ取っています。
そしてそれらはすべて、
皮膚や呼吸を通して、
身体に入ってきます。
土壁の空間で感じる心地よさは、
空気の質が、
身体にとって無理のない状態に整えられているから
なのかもしれません。
土は、空気を整えています。
それは特別な機械による制御ではなく、
素材そのものが持つ性質によって、
静かに行われています。