Atelier Report

2021.11.09 木と土と火の家(自邸)

2020年秋 原木市場で丸太を買う

或る日、畦地製材所の畦地さんから連絡がありました。

熊野で200年生の原木が出るらしいんやけど、来ぉへん?

いきます、と即答の僕。

 

畦地さんは三重県の尾鷲市で製材所を営んでいる大男で、山や製材所の視察でいつもお世話になっている間柄。

おっとりした雰囲気でどこか抜けている感じがあるが、聡明な頭と繊細な感覚を持ち合わせている。

僕のことを、見た目はおっさんやけど、中身は少年の様やな、と褒めてくれる…

言わばおっさん仲間である。

僕は、畦地さんという人とこの人の扱う杉材がとても好きで、頻繁に顔を出してきた。

自邸をつくる際は、必ずこの杉で、しかも200年級のものと決めていた。

ただ、そういうものは中々おいそれとは市場には出てこない。

こんな杉が欲しいです、と声をかけておいて、ひたすら待つか、

もしくは、金に糸目をつけずに伐り出してもらうしかないのである。

当然、お金に余裕のない僕としては、前者のひたすら待つ作戦しか取れないわけだが、

家づくりというのは、通常は、土地を買ったら大まかなスケジュールが決まってきて、

そして各工程に合わせて材料を調達することになるから、
先に土地を見つけてしまったにも関わらず、丸太にこだわってしまうと、いつ出るともわからないまま、

ひたすらローンを払い続けながら、待たないといけなくなるのである。

実は当初、構造躯体もフローリングなどの造作材も全て尾鷲の杉にしようと考えていた。

ただ、畦地さんから声がかかった時には、まだ土地が買えておらず、しかも世の中はコロナ禍真っ只中。

この先、使うかどうかまだわからない丸太をドーンと買い込むわけにもいかず、

それでもこんな機会を逃したくなくて、造作材の分だけ買おうと決めて、三重へ車を走らせたのだった。

原木市場の競り風景。

 

市場で丸太を買う場合、まず、前日に丸太を見に行きます。

丸太の断面、樹皮、瘤、前後の断面などから、丸太の良し悪しを判断して、買いたい丸太に印をつけていきます。

同業者が前日から集まっていて、腹の探り合いも行われています。

出ている良材と本数などから大体の値段の予測をたて、予算に見合った購入計画を立てます。

そして当日。

競りがスタートすると、早速、進行役の方が、競っている丸太の前に立って、モゴモゴして聞き取れませんが、数字の混じった念仏のようなものを唱え始めます。

内容はよく聞きとれませんがその呪文のリズムと強弱ははっきりしていて、だんだん耳が慣れてくると、その世界観に引き込まれていきます。

進行役には、補佐がいて、競り落とした人の番号と金額を丸太の断面に書き込みながら、後をついていきます。

 

ぽんぽんぽんとテンポよく進んでいくので、ついていくのがやっと。

僕が競り落とすのは、全て畦地さん任せでしたが、競りに参加していると一体何本買ったのか、いくらで買ったのか覚えていられません。

ざっくりこのくらいは買ったんじゃん?的な。。。

超アバウト。

昨日の綿密な作戦はなんだったんだろう。。。

そして、中盤になった頃、畦地さん、調子が出てきたらしく、

丸太に畦地さんの番号が書かれまくってきました。

要は大量に買いまくっているわけです。

そして、買うのは僕です。

 

え、え、え、ちょっと買いすぎじゃないっすか?

ところが、買い手が大勢で移動しながらの競りは、絶え間なく続いていくため、

なかなか十分に畦地さんとコンタクト取れません。

ようやく次の列に切り替わる際に声をかけられたものの、

思っていたよりも安い単価だから、少し多めに買っても大丈夫、みたいなことを、

普段のおっとりした感じからは想像できないくらい早口で言ったかと思うと、また買い手の雑踏の中へ消えていきました。

あぁ、任せたわけだから、もう最後まで任せよう。。。

というわけで、僕の丸太は35本。

予算内にも納まって、とても良い買い物になったことを知るのは、市場が終わり、ご飯を食べに行って、宿所に戻ってから恐る恐る計算してみたあとでした。

さすが畦地さん。

191番(畦地さんの番号)と 立米単価×1000円