Atelier Report

2022.06.13 木と土と火の家(自邸)

愛情しか感じない。

僕は荒壁塗りがすごく好き。

建築の知識では、荒壁というのは、土塗り仕上げのための下地という位置付け。

下地といえど、荒壁が仕上がるまでの物語(工程ではなく敢えて物語と言いたい)を見終えると、

ただの下地とは思えないし、思いたくもない。

家づくりの中で、一番贅沢で一番スペシャルな瞬間が、荒壁土であるとさえ言える。

簡単におさらいしてみよう。

荒壁工事は、まずは小舞を掻くところから始まる。

これがまた癒される。

現場から大工はいなくなり、土壁職人さんだけが仕事をするのだけど、

日頃耳にする電動工具の音は全くしない。

竹と竹、竹の木がぶつかり合う音だけが現場に響く。

そして主役は竹だけではない。

藁縄もまた一役を担う。

藁縄は、編んでくれる職人さんも少なくなってきている状況で、麻紐を2本仕込んだ特注品。

藁縄は扱ってみるとわかるけど、摩擦力が強くてすごく解けにくい。

その藁縄が竹と擦れる音もまた心地の良い音なのだ。

荒壁土の登場

今回の現場は土地に余裕がないため、あらかじめ寝かせたものを搬入。

表面は黄土色で中は灰色をしている。

発酵しているので、独特な香りを放つ。

僕は田んぼのお手伝いで肥料まきとかもしているので、この匂いがたまらなく好き。

人によっては(大半の人は?)くさいと感じるようですが。。。

触ると粘り気を感じます。

愛知県の粘土と発酵による藁の繊維分が、強靭な粘り気を出しているそうです。

舐めると、血の味がしました(鉄分がたくさん入っているそうです)

愛情しか感じない、荒壁土工事。

30坪前後の家で、ざっと1ヶ月かかります。

厚く塗る分、乾くのも時間がかかります。

 

乾燥後、土壁職人さんが顔を出しました。

ひび割れも少なく、いい仕上がりだと一言。

荒壁が下地という感覚だった時は、割れた方が良いと勘違いしていました。

中塗が割れにくい込んでより密着すると思っていましたが、そうではありません。

ひびの中に砂が入っていくだけで、くっつきやすさとあまり関係がないんです。

家づくりの中で、上棟と同じくらいに嬉しい荒壁土塗り!

今後も土壁の家が増えていくように頑張りたいと思います。